
看護師として働いてきた経験は、動画編集でも役に立つのか。僕の場合、役立ったのは「ニーズを理解する考え方」と「報連相」でした。
何のために、この動画を作るのか。どの層に届けたいのか。依頼された作業を始める前に、相手の目的を考える。その考え方には、看護の仕事で身についたものがあると感じています。
一方で、看護師として働いていたから、動画編集の仕事が何でもできたわけではありません。特に慣れていなかったのが営業です。何を伝えればよいのか分からない。断られるのが怖い。自分の強みもうまく言えない。そこは新しく経験する必要がありました。
構成や演出の引き出しも、現場で教わりながら増やしてきました。
僕は看護師として働きながら、2024年に動画編集を始めました。この記事では、始めた理由ではなく、それまでの仕事で身についた力を、どう別の仕事につなげたかを振り返ります。
看護師から動画編集に挑戦したい方はもちろん、異業種から制作の仕事を始めたものの、自分の強みを説明できずにいる方にも参考にしていただければと思います。
この記事で分かることは、次の4つです。
- 看護師として身についたニーズ理解を、動画の目的・視聴者の確認にどうつなげるか。
- 進捗報告、不明点の確認、遅延の相談をどう仕事に組み込むか。
- 看護経験とは別に、営業や編集技術を学ぶ必要があった理由。
- 自分の経験を言葉にするための、ヒアリング・報連相・自己紹介テンプレート。
経験談は加藤本人へのヒアリングに基づきます。記事内の記入例・テンプレートは本記事用の提案で、実際のやり取りを転載したものではありません。写真調の挿絵は生成イメージで、本人・実際の関係者・勤務先を撮影したものではありません。
1. 看護師経験が活きた部分と、新しく学んだ部分

僕が動画編集の仕事に持ち込めたのは、相手の目的を考える姿勢と、仕事の状況を周囲に伝える習慣です。対して、仕事を獲得する営業や、映像として伝える技術には、別の学びが必要でした。
「看護師だからできる」ではなく、何をしてきたかを分ける
看護師という肩書きだけでは、編集の品質や、依頼への対応力までは伝わりません。同じ看護師でも、経験した業務や得意なことは異なります。
今回、自分の経験を振り返って挙げたのは、次の3つでした。
| 項目 | 僕の経験 | 動画編集の仕事で考えること |
|---|---|---|
| ニーズ理解 | 相手のニーズを理解しようとする考え方が身についていた | 何のために、どの層に届ける動画なのかを確認する |
| 報連相 | 進捗を伝え、不明点を確認し、遅れそうなら早めに相談することを意識していた | 相手が現在の状況を把握し、判断できるようにする |
| 営業・編集技術 | 営業には不慣れで、構成・演出の引き出しも足りなかった | 提案する経験と、制作物へのフィードバックを重ねる |
表の上2つがあるから、下の課題を飛ばせるわけではありません。ただ、異業種に移ったからといって、それまでの経験がすべて使えなくなるわけでもありません。
看護の能力と、動画編集の適性は同じものではない
日本看護協会の看護実践能力に関する資料(PDF)には、情報を集めて整理・判断する力や、関係者と情報共有・相談・提案を行う力が整理されています。
これは看護実践についての資料であり、看護師の動画編集への適性や、受注しやすさを示した調査ではありません。
そのうえで、自分が普段どのように情報を聞き、整理し、伝えているかを振り返ると、別の仕事でも使える行動を見つける手がかりになります。僕にとって、その一つがニーズ理解でした。
2. ニーズ理解を動画に生かす「何のために、誰へ届けるか」

僕が看護経験とのつながりを感じているのは、「何のために」「どの層に届けたいのか」を考えることです。動画の見た目を決める前に、この2点を押さえたいと思っています。
動画を作ることと、その動画で実現したいことを分ける
「動画が欲しい」という依頼でも、会社を知ってほしいのか、商品を理解してほしいのか、採用応募につなげたいのかによって、伝える内容は変わります。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」の動画制作の説明でも、受託制作の流れに、依頼者のニーズ把握や企画の提案・合意が含まれています。編集者がすべての工程を担うとは限りませんが、動画制作はパソコン上の操作だけで完結する仕事ではないことが分かります。
編集だけを担当する場合も、目的が分からなければ、まず窓口のディレクターに確認できます。担当範囲を越えてクライアントに直接連絡したり、決まった企画を独断で変えたりするという意味ではありません。
届けたい相手によって、必要な情報を考える
ここからは、考え方を説明するための架空の採用動画の例です。実際のクライアント事例ではありません。
同じ訪問看護の採用動画でも、届けたい相手が「訪問看護を経験したことのない看護師」なら、独り立ちまでの支援や相談方法が気になるかもしれません。一方、経験者が転職先を探しているなら、担当する業務や働き方の具体的な条件を知りたい可能性があります。
ただし、未経験者は全員こう、経験者は全員こう、と決めつけることはできません。まず仮説を立て、依頼者が実際に受けている質問や、伝えたい情報を確かめます。
このように考えると、インタビューで何を聞くか、どの発言を残すか、どこを補足するかの方向性を整理できます。
ニーズ理解は、相手の気持ちを当てることではない
「きっとこうしてほしいはず」と想像しただけでは、依頼者と認識が合っているか分かりません。目的や対象者を自分の言葉でまとめ、相手に確認するところまで行うと、制作の前提を共有しやすくなります。
例えば、次のような確認です。
今回は[目的]のために、[届けたい相手]へ向けた動画を作る、という理解で合っていますか。特に[伝えたい内容]を優先する方向を考えています。
これは本記事用の文例です。依頼者やディレクターとの関係に合わせて調整してください。
目的を理解することは、提案の土台になります。ただし、その理解を動画にするための構成や編集技術は、別に磨く必要があります。
3. 報連相は、画面越しの仕事でも土台になった

看護師として当たり前にしていたことで、動画編集の仕事でも評価されたものとして、僕が挙げるのは報連相です。特に、進捗を自分から伝えること、不明なまま進めないこと、遅れそうなら早めに相談することを意識していました。
完成してからでは分からない、途中の状況を伝える
動画編集では、相手と同じ場所にいないまま仕事が進むことがあります。連絡がなければ、順調に進んでいるのか、素材が足りず止まっているのかを、相手は把握できません。
そこで、単に「作業中です」と伝えるだけでなく、どこまで終わったか、何が残っているか、いつ提出する見込みかを分けます。これなら、相手も次の確認や公開の予定を考えやすくなります。
進捗を伝える頻度は、案件の長さや体制に合わせて決めます。細かな作業のたびに通知を送るより、確認が必要な節目と、問題が起きたタイミングを共有しておく方法が考えられます。
分からないことを、分からないまま進めない
指示に複数の解釈があるとき、独断で最後まで進めると、後で大きく作り直すことになりかねません。
ただ「分かりません」と送るより、「ここまでは理解しています」「この部分はAとBのどちらでしょうか」と、確認したい点を切り分けます。相手が答えやすい形にするためです。
何でも確認すればよい、という意味ではありません。共有済みの指示やマニュアルを確認したうえで、自分では判断できない点を相談します。
遅れそうな段階で、状況と見通しを相談する
遅延についても、納期を過ぎてから知らせるのと、間に合わない可能性が見えた段階で相談するのとでは、検討できる対応が変わります。
残っている作業、提出できる見込み、相談したい対応を整理して伝えます。日程変更や担当変更は、自分だけで決めず、窓口と合意してください。
僕自身、チーム運営では、担当者と納品当日まで連絡が取れず、横動画が届かなかった経験があります。最終的に自分が対応し、納品は1日遅れました。その後は中間報告を求め、一定時間返信がなければ再連絡・担当変更を検討し、ADが進捗を追うルールにしました。
これは、報連相があれば必ずトラブルを防げるという話ではありません。それでも、状況を把握するための連絡を、担当者の自主性だけに任せないようにする転機でした。
本業があるからこそ、連絡できる時間を共有する
本業の勤務中に、いつでも返信できるとは限りません。そこで、連絡を確認できる時間帯や、急ぎの連絡をどう扱うかを先に共有しておくと、双方の期待をそろえやすくなります。
報連相の丁寧さを、「常時、即返信できること」と同じ意味にはしない方がよいと考えます。対応できない約束をするより、守れる連絡方法を決めることが大切です。
4. 一番慣れていなかったのは、自分から仕事を取りに行く営業

看護師の仕事との違いを聞かれたとき、僕が挙げたのは営業でした。それまでの看護業務では、自分で制作の依頼先を探し、提案して受注する経験がなかったからです。
何を伝えるか分からないし、断られるのも怖かった
相手の話を聞くことと、自分から仕事を提案することは、僕にとって同じではありませんでした。
営業では、何を伝えればよいのか分からない、自分の強みが分からない、断られるのが怖い、という難しさがありました。ニーズを理解しようとする考え方が身についていても、それだけで営業への戸惑いがなくなったわけではありません。
「コミュニケーションの仕事をしてきたのだから、営業もできるはず」と、ひとまとめにしない方がよいと思います。依頼を受けてからの対応と、仕事を頼んでもらうための提案には、それぞれ準備が必要です。
Threadsで見つけた会社に、自分から連絡した
僕は、Threadsで見つけたSNS運用会社へ直接営業しました。最初は返信がありませんでしたが、改めてお願いし、話を聞いてもらえることになりました。
事務所での面談では、ポートフォリオに加え、今後どうしたいか、どうなりたいか、どのくらい稼ぎたいかといった話をしました。「なんでもやります」と伝えたことも覚えています。
このときは面談が中心で、テスト案件はありませんでした。ただし、当時の営業文面は残っていません。ここで紹介しているのは経緯であり、そのまま送れば受注できる営業文ではありません。
また、再連絡すれば誰でも話を聞いてもらえるわけではありません。営業を断られた相手への繰り返しの連絡を勧めるものでもありません。
今から準備するなら、意欲と対応範囲を両方伝える
「なんでもやります」は、当時の僕の意欲を表す言葉でした。これから営業する方には、意欲だけでなく、相手が判断できる情報も整理することを提案します。
- どんな制作を担当できるのか。
- どの作品で、その力を確認してもらえるのか。
- 作業や連絡に対応できる時間はいつか。
- まだ経験がなく、相談や確認が必要な業務は何か。
これは、僕が最初からすべて整えていたという話ではありません。これまでの経験を、読者が準備できる形に整理したものです。
5. 構成・演出・企画の引き出しは、現場で学び直した

目的や届けたい相手を考えられても、それを映像で表現する技術が十分だったわけではありません。僕は、構成の作り方や飽きずに見てもらう演出、企画の引き出しに苦戦しました。
横動画の経験だけでは、ショート動画で分からないことが多かった
営業したSNS運用会社との仕事で、初めてショート動画に取り組みました。それまでは横動画しか経験していなかったので、初めてのことばかりでした。
横と縦の構成の作り方や、見飽きない演出について、自分の中に引き出しが足りませんでした。「誰に届けるか」を考えることと、「その人に見てもらえる形に編集すること」の間には、学ぶべきことがありました。
1時間のフィードバックをもらえる環境で学んだ
その会社では、1時間のフィードバックをもらえる環境がありました。僕は、幸せな環境だったと感じています。実際の制作物をもとに教えてもらい、演出の引き出しを増やせたからです。
看護経験から持ち込めたものがある一方で、動画編集の現場で新しく教わったものもあります。その両方が、仕事を進めるために必要でした。
これから学ぶなら、操作できたかだけでなく、「なぜこの順番なのか」「なぜここに補足が必要なのか」と、意図まで振り返れると、別の制作にも応用しやすくなります。
そのための振り返りとして、次の4項目を書き残す方法が考えられます。本記事からの提案で、当時僕が使っていた記録表ではありません。
- 指摘された箇所。
- 何が伝わりにくかったか。
- どう直したか。
- 次の制作で気をつけること。
他の経験談は、自分との違いを確かめながら読む
看護師から制作の仕事へ進んだ方の経験も公開されています。
例えば、kutsuhimo consultingの社員インタビューでは、看護師から動画制作へ転身した方が、看護で培った優先順位づけとのつながりを語っています。NurseLifeMixの看護師YouTuberへのインタビューでは、視聴者が理解しやすい言葉や構成を考える姿勢が紹介されています。
前者は企業の採用広報を含む社員事例、後者は本人の発信活動についての取材です。働き方も、依頼を受けて制作するのか自分で発信するのかという立場も異なります。
こうした経験談や口コミから、自分の強みを考えるヒントは得られます。ただし、一人の成果や感想を、看護師全体の適性や成功率に置き換えることはできません。僕の話も、自分の経験と照らし合わせながら読んでいただきたいと思います。
6. 看護師経験を仕事に結びつける3つのテンプレート

ここからは、本記事用に作成したテンプレートです。看護師経験を単なる肩書きで終わらせず、制作時の確認、連絡、自己紹介に落とし込むために使ってください。実際に経験したこと、対応できることだけを記入します。
テンプレート1 動画の目的と届けたい相手を確認する

編集のみを担当する場合は、すでに決まっている内容を窓口から共有してもらいます。相手の負担を増やさないよう、依頼書に書かれていることを何度も聞かず、不明点をまとめて確認してください。
テンプレート2 進捗と相談事項を分けて伝える

遅れる可能性がある場合は、理由だけでなく、残りの作業と見通しを添えます。まだ見通しが立たないときは、無理に提出時刻を断言せず、いつ見込みを報告できるかを相談します。
テンプレート3 経歴を、仕事で行うことに言い換える

文章にするなら、例えば次の形です。
[これまでの仕事]で、[実際にしてきた行動]を意識してきました。動画制作でも、[具体的な対応]に生かしたいと考えています。現在対応できるのは[業務範囲]です。[作品]では、[担当した部分]をご確認いただけます。
「看護師だからコミュニケーションが得意です」と言い切るより、自分がどのように対応するかを示します。看護の経験を紹介する際にも、患者さんや関係者の個人情報、勤務先の非公開情報は記載しないでください。
7. 看護師経験と動画編集について、よくある質問

看護師なら、動画編集に向いていますか?
職業だけでは判断できません。僕の場合は、ニーズを理解する考え方と報連相が役立ちました。一方、営業や構成・演出は別に学ぶ必要がありました。自分がしてきた行動と、これから学ぶことを分けて考えてみてください。
医療の動画でなければ、看護師経験は使えませんか?
僕が今回挙げた「何のために、誰へ届けるのかを考える」「進捗や不明点を伝える」という行動は、医療知識そのものとは別です。医療以外の制作でも使える場面を考えられます。ただし、扱う業界や内容の理解は、その案件ごとに必要です。
報連相ができれば、編集技術が未熟でも受注できますか?
それだけで受注できるとは言えません。必要な品質、納期、担当範囲に対応できるかが前提です。丁寧な連絡と、依頼されたものを制作する力は、どちらか一方で代わりになるものではありません。
営業が苦手なら、動画編集を仕事にするのは難しいですか?
僕にも、何を伝えるか分からない、断られるのが怖いという戸惑いがありました。まずは、対応できる業務と作品、連絡できる時間を整理するところから始められます。直接営業に限らず、公開されている募集への応募など、仕事の探し方もあります。ただし、どの方法でも受注が保証されるわけではありません。
本業中も、すぐ返信しないといけませんか?
常に即返信できることを前提にする必要はありません。勤務や制作の予定を踏まえ、連絡できる時間帯と確認方法を依頼前に共有します。合意した対応が難しくなったときは、その状況を相談してください。
8. 看護の経験を、次の仕事でどう使うかを考えたい方へ

看護師としての経験で、動画編集の仕事にも活きたものがあります。僕の場合は、相手のニーズを理解する考え方と、報連相でした。
一方で、営業は初めてのことが多く、構成や演出の引き出しも足りませんでした。そこで、実際に営業し、制作物へのフィードバックを受けながら学んできました。
これから挑戦する方も、今までの仕事で当たり前にしてきたことを書き出してみてください。その中から、次の仕事で使える行動を探します。そして、足りない技術や経験は、別の課題として学んでいく。その整理から始めてみてはいかがでしょうか。
著者:加藤
看護師として働きながら、2024年に動画編集を開始。2025年4月にチーム化し、医療・看護領域のSNS採用にも取り組む。本記事の経験談は、本人へのヒアリングに基づいて構成。
参考資料・確認日:2026年10月2日
- 日本看護協会「看護実践能力・看護実践能力に基づく学習項目・看護実践能力習熟段階」PDF:情報収集、ニーズ理解、関係者との連携に関する説明の参考。動画編集への適性を実証する資料としては使用していません。
- 厚生労働省「動画制作」職業情報提供サイト job tag:受託制作で扱う工程の参考。
- kutsuhimo consulting「看護師からクリエイターへ──『資格に寄りかからない』決断の理由とは。」:企業が掲載した本人へのインタビュー。一般的な転職結果や適性を示す統計ではありません。
- NurseLifeMix「インタビュー#09 四季」:本人の動画発信についての取材。受託編集者の受注実績とは区別しています。
各資料や経験談の記述は、発行・掲載当時の内容です。